遺伝子解析グループ

文責: 橋本 真一(HASHIMOTO, Shinichi)
Last Update: 2008.7.30
■研究紹介
SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)法はDNAチップとともに包括的遺伝子解析法として1995年のVelculescuにより開発された。SAGE法は、未知、既知にかかわらず遺伝子の発現を何万という単位で包括的に調べることが可能な方法であり、発現解析データを数値化できるところが特徴である。たとえば、ある細胞で発現している遺伝子のコピー数、種類を示し、プロファイルを作製してしまえば、他の細胞(癌化、分化、遺伝子導入、薬物処理したものなど)との比較がコンピュータ上で容易にできる。現在、Johns Hopkins大学のグループを中心にSAGE法により多種の癌組織、癌細胞の遺伝子解析が精力的に進められ癌特異的な抗原の同定、癌化に関与する遺伝子の検索が行われている。解析した転写産物はすでに約700万個以上にのぼる。この方法を用いることにより各疾患での特定の細胞の遺伝子発現の差異をもとにして、欠落または過剰に発現している遺伝子を同定することも可能であり、そこからさらに疾患候補遺伝子を特定できると予想される。また、SAGE法を用いたシングルセル、および微量のサンプルでの解析法も開発されており、現在、定量的な包括的遺伝子発現解析としてSAGE法が多く利用されている。 現在まで我々は、SAGE法を用いヒト血液細胞を中心に約70万個以上の遺伝子を解析(Blood 101:3509-3513(2003); http://bloodsage.gi.k.u-tokyo.ac.jp)し、それぞれの血液細胞特異的な遺伝子の発現を検討した。解析した血液細胞は17ライブラリー、naive T, resting Th1(CCR4-), resting Th2(CCR4+), activated Th1, activated Th2細胞、CD8 T細胞、NK細胞、顆粒球、単球、GM-CSF及びM-CSF誘導マクロファージ樹状細胞などのサブセットである。得られた転写産物を解析し、Unigeneのデータベースを用いて遺伝子数を計算したところ遺伝子の種類としては27,323個であった。27,236個の中で細胞(細胞あたりの遺伝子発現を30万コピーとして計算)あたり501コピー以上発現していた遺伝子は73種類であり、逆に5コピー以下の遺伝子は21,323種類と全体の78%であり、細胞あたりほとんどの遺伝子が低頻度で発現していた。結腸直腸癌細胞系からの643,283の転写産物の解析でも、細胞につき1コピーと同程度低くレベルで存在すると思われる転写産物が全体の83%であった(Nat. Genet., 1999)。これらのより低レベルの転写産物の多数は、正常および病理学的細胞表現型を決定することに対して必須である可能性がある。現在の遺伝子発現解析、数万程度のSAGE解析、DNAアレイなどのより遺伝子転写物を測定ではあまり低いコピー数(1細胞につき2未満)で発現される何千もの遺伝子を確実に検出することができない。生体組織全体の遺伝子数に関してはゲノムの塩基配列の決定をもとにSAGE dataの統合、5’-end tagの収集などのより正確な数が明らかになりつつあるが今後さらに遺伝子発現をdeepに検討する必要がある。

なお、SAGE法および次世代シークエンサーについてまとめた文があるので、こちらも参考にしていただきたい。