松島 綱治 教授からのメッセージ


私達の教室は、白血球走化性因子ケモカインという分子ウィンドウ(窓)を通して炎症・免疫反応の機序を解明し、炎症・免疫疾患の新規予防、病態改善、治療戦略を提供することを目指している。ケモカインのプロトタイプ、interleukin-8(CXCL8)とMCAF/MCP-1(CCL2)は、私が米国National Cancer Institute, NIHに主任研究員として在籍中、Dr.吉村禎三と一緒に発見した分子である。ケモカインの発見により、炎症・免疫反応時の白血球サブセット特異的組織浸潤機序が説明できるようになり、古くからの固定組織標本を観て炎症・免疫反応を語る病理学・免疫学から、場と時間軸を加味したダイナミックな白血球動態を伴う動的免疫学の次代に移行した、と言っても良い。私達の研究のゴールは、私達の研究を通じて普遍的生命現象の根幹に関わる機序を解明する、もしくは疾患予防・病態改善・治療につながる重要な標的分子を提供することと、それに基づくワクチン・抗炎症剤・免疫制御剤・がん治療薬の開発である。

発見後20年、ケモカイン研究は炎症・免疫・病理学・臨床研究分野において大きな拡がりをみせ、また世界中の製薬企業によってケモカイン/ケモカイン受容体システムを標的とした抗炎症剤・免疫制御剤の開発が展開されている。

私は、研究室の門戸をたたく、意欲ある誠実な若者にはできるだけの機会を与えたいと思っている。出身大学、学部、研究歴は問わない。オリジナルで普遍性を持つ、重要な仕事をしてもらいたいと思っている。どのジャーナルに論文が出せるかではなく、研究の質と当該研究(開発)分野に対するインパクトの大きさで判断したい。自分の仕事を通して、教科書の一行でも書き換えれば大きな仕事と言える。あせらず、知識、技術を広く身につけ、慎重に粘り強く仕事をする大器晩成型を求める。

アカデミアにおける研究職は、おそらく最も創造的で自由度のある仕事であると思うが、当然社会との関わりを持ちながら研究活動を行うが故に、常識と良い仕事をするという自覚を持って研究に励んでほしい。

赤痢菌の発見者、志賀潔の言葉に「先人の跡を師とせず、先人の心を師とすべし」 とある。1人でも多く、世界に羽ばたく優秀な研究者を同僚から輩出することができれば幸せである。



総 説 な ど
ケモカインからみた炎症と免疫反応のリンク (HTML, 2006年)
ケモカインによるCTLメモリー誘導・維持の場の形成制御 (PDF, 2008年)
私の研究履歴書:ケモカインのプロトタイプ、IL-8とMCAF/MCP-1の発見物語 (HMTL, 2007年)